販売活動のクライマックスはクロージングだと言われることが多いように思います。時間を掛けて営業活動を展開して、顧客のニーズに迫ったあれこれと準備を整え、客先と最後の詰めになるのですから、確かにもっとも緊張を強いられるシーンです。

古来、人事を尽くして天命を待つ精神が大切だと言われ続けて、受験戦争を駆け抜けた人もまだまだ多いと思います。最近はそのような根性論が陰を潜めてしまった感もありますが、やはり一人前のビジネスマンとしては、天命の部分が気になるに違いありません。

上卦は陰−陽−陰で水を意味する「坎」(かん)卦です。坎と聞いてあれ?と思った方は易に対する感覚がかなり鋭いと言えるでしょう。坎は通常、凝り固まった問題を暗示しているからです。ひろく水を意味しますが、氾濫して治められない状況です。

下卦は陽−陰−陰で、火を意味する「離」(り)卦です。離卦は着いたり離れたりという、一見反対する性質を持っていいます。そこから易の世界では契約などの書類を意味すると考えられてきました。

全体を見ると三陰三陽がバランスを整えています。三陰三陽卦は少し特殊な性質を持っていると言えるでしょう。その他のものよりも陰陽のバランスが拮抗しており、全体としてのまとまりが強く反映されています。

ものごとはあるべきものがあるべきところにあるのが肝要です。時期を正しくし、場所を正しくしてこそ、なるべきことを全うすることができるからです。どこでもいつでもとは、つまりどこでもなく、いつでもないという意味の言い替えに過ぎません。

火と水の性質を正しく踏まえるというと、意外な気がされるかも知れません。水も火も私たちの生活にとって馴染みのあるものだからです。しかし、東洋思想の流れからの見方が少し違っている点に是非留意して頂きたいと思います。

水と火は陰陽が反対です。陰陽が反対だと、私たちはつい反発し合う結果、お互いが離れてしまうと考えがちでしょう。しかし、陰陽は互いに引かれ合う性質を持っています。お互いを区別しながら引き合うのだと考えます。

ビジネスにせよ、対人関係にせよ合意はどちらか一方の言い分では成立しません。それは支配関係を形成する結果を招くだけです。合意とはお互いの要求を組み合わせて調整することだからです。

各要素がバランスを取っている方が創造性が高まるとも考えられます。片方の要求が一方的に採用されたら、結果的にパターンは一通りに集約されてしまいます。計算によると半分半分で組み合わせる場合がもっとも多様性が高まるのがわかります。

また全体が均質な一個のものでは、次の展開が大がかりで大変だとも知っておくと良いでしょう。1つに特化した事業は変化できないことによって特化しているからです。つまり専用は転用できないのです。専用は便利に違いありません。専用という考え方は、既済とはまったく違った結果を生み出します。

次の展開に向けて準備を始める時を意味するのが既済です。1つの完了は次のものの開始へと接続しています。手元の契約が次の契約に向けてのスタートを意味し、次のゴールはさらに次のゴールに接続して連関します。

1回毎に既済を使って、けりを着けながら前進するのが予祝として使う方法です。けりが着かない問題を後回しにしてしまう事業所と仕事をした経験が多くあります。そのような事業者はだらしない人なのかと思ってしまいました。

既済を予祝として用いるのは決して予想外の幸運に恵まれることを期待してのことではありません。この卦は人事を尽くして天命を待つという精神を内在しており、私たちの努力が着実に実を結ぶことを期待する予祝なのです。