改めて口にすれば当たり前ですが、物事は始めなければ、その善し悪しは分かりません。何が言いたいのかというと、どんなに見込みがあると思っていても、実際に始めてみると、予定外の事態が必ず生起します。その結果、始めなかった方が良かったということにもなりかねません。

今回ご紹介したいのは、ビジネスのチャンスを生かして芽吹かせるための予祝です。いくら投資をしても成果がない、いくら思いを伝えても実らない恋にも。共通しているのは、種子が芽吹くための環境と契機です。

地風升(しょう)は進み昇るという意味の卦です。ビジネスを充実したものにしたい。あるいは本気の思いを相手に伝えたい。事業をこれから大きく伸ばしたい、二人の関係をより実りあるものにしたいという時に用いるがよろしいです。

上卦は陰−陰−陰になっていて坤(こん)と呼ばれます。坤は平らに伸びた大地であって、柔らかく耕された様子を3つ重なった陰が表現しています。坤は平らな地が広がったイメージだと教科書に説明されている通りでしょう。大地は種を蒔かれるのを待っており、中に命を宿して大きく育てる母の力を本質としています。

下卦は陽−陽−陰で、巽(そん)を形作っています。これは巽は風であり、草木をも意味します。風は入り込む性質を持っています。そして風は草木が揺れることで、目に見える形をとるので、風は草木を意味するようになりました。

巽風の中心は一番下の陰の部分に宿るとされています。陰は力が弱いので、マイナスに働く場合もありますが、巽の風は暖かく、そして柔らかく吹き込む春のイメージを宿します。全体として地面の下にある草木の種、空洞を表していると解釈されます。

地下の種に宿った命がいずれ地上に昇って姿を表すので、升という名前がつけられたと説明されます。ビジネス、恋愛と同様に妊娠、出産も一種の事業だと捉えると、升卦を用いて予祝できますね。

さて、人は付き合って見なければ、その人の核心は見えてこないものです。姿形が良く、好ましく思えても、中身がまったく伴っていないということも人間だから有り得ます。

人間は外と中とがまったく関係なくても問題がないからですね。人間はお互いの距離感に応じて反応が変化するのが常態です。ですから、距離感が遠いと好ましく見え、近づいて見ると期待と違ったり、結婚してから後悔したりすることにもなりかねません。

ですから始まりはいつも大きなリスクが伴います。ものごとを始める前に、人とつきあい始める前に結果を性格に予測できません。ですから、始まりに善し悪しはありません。ただ、結果に結びつくことを願うのみです。ですからこの卦で予祝したなら、続けてどのように実りを支援できるかを考える必要があるでしょう。

従順さが良い結果を出す要点だと易は説きます。しかし従順であることと盲順とは違います。盲順は相手を見ず、行き先を任せてしまう無責任な態度です。従順さは似ていてもポイントを外しません。相手をしっかと見極め、自分も参加します。

ビジネスでも肝心なのは、盲順ではなく従順さだとおわかり頂けるでしょうか?どれだけ優れた商品であってもクライアントの要求に応えていなければ、それは商品として成立しません。クライアントの要望を耕して柔らかくすると、中に命が宿っているのを見いだすことができるに違いありません。

生きているものは柔らかい状態であるという考え方は大切です。柔らかいものに私たちは命を感じ取るようになっています。そのように考えれば、柔らかさの中に命が宿るとも説明可能です。升卦は柔らかくなった大地の下に命を宿しているのは先ほどご説明した通りです。