今回は楽しみの予祝の話をしてみたいと思います。易経は儒学のテキストですから、基本的には楽しみ、喜びを戒める立場を堅持しています。それでも楽しみの卦を持っているのには、人間の本質に楽しみが深く関わっているからに違いありません。

楽しみ、喜びを劣ったこととマイナス・イメージで理解していると結局、ものごとを達成することができなくなったり、中途で挫折を経験する結果に終わるのではないでしょうか。意外と楽しむこと、喜ぶことは私たちにとって重要なのです。

上卦、下卦ともに陰−陽−陽の順番です。同じ卦が上下に重なった形をしています。このように上下が同じ卦が重なってできているのを八卦では純卦といって、とても重要視しています。それだけ大きな力が宿っていると言えるでしょう。

卦は兌と呼び、沢の形を表しています。山の上から流れてくる清涼な小川のイメージです。ものの本によれば、強い立派な陽の2つから一番上の位置を譲られたのが上にある陰だと解説しています。

望外の喜び事があるものです。突然、昔からのつきあいの人がやってきて、思わぬ提案をしてくれることもあるでしょう。あるいは時期でもない大抜擢などは、心臓が止まるかと思うほど嬉しかったりします。このような喜びが兌の意味する喜びです。

ただ、これが喜びの卦でも、喜びにもさまざまにあります。喜びの卦の別の意味には、幼い少女が口を上に向けて大笑いしている様子だと捉える見方もあるから注意が必要です。皆さんの喜びはどちらにあるのでしょうか。

最近、自分一人で楽しめる娯楽が随分と増えてきました。習い事も基本的に一人で楽しむもののように見えます。というのも、古来日本に伝わってきた遊びには一人で遊ぶものがなかったように思うのです。

ヨガや絵画教室、陶芸も彫刻も周囲に誰がいなくても楽しむことができるでしょう。パチンコや競馬も同様です。しかし、誰かと一緒に、ともに喜ぶ経験が二人だけの大切な関係をつくります。これはいつでも変化しない真実ではないでしょうか。

兌為沢の上卦は下を向くと、つまり相手が逆を向くと、陽−陽−陰になります。するとこれは巽卦の風になります。そして全体としては風沢中孚という卦に変化します。ここにも兌為沢の大切な意味が隠されているようです。

風沢中孚と兌為沢は近い仲間で、場合に応じて変化しうるのですが、少しの態度の変化が二人の関係の真実の姿を露呈させてしまうといった結果を招くこともあります。原理原則を貫いた態度を維持するのは想像する以上に難しいですね。

兌為沢の卦を用いて、天に従い人に応じることで運が開けるといいます。天に従うのは、仕方なく従う態度ではなく、喜んで従うのであって、だからこそ、それが楽しみになります。そして人に応じることが大切なのですね。

人の言う言葉かり追従しているのであれば、それは人の支配を受けているのと変わりません。しかし、自らの意思で従うことを選んでいるのであれば、そこには楽しみが彩りを添えてくれるはず。

兌為沢の関係はリード次第で二人の関係を柔軟にできることになります。リードする側の考え次第で、中孚の関係とともに共働して楽しむ状態とがストレスなく移行できます。恋愛関係が夫婦関係に移行し、家族を形作っていくのですから、それはとどまることのない関係の変化だと捉えることもできるでしょう。

楽しみ喜びにも誠実さが必要だと理解できます。思いと一言でいっても、さまざまに考えられるますので、片方が目的を遂げると、立ち消える関係は兌為沢でも中孚になりません。ですから、志の一致による交際は喜びを確認するのが肝心です。相手を対象にすれば正しい喜びでです。